内縁の妻が相続できますか?

人のあり方、生き方が多様化する中で、長年一緒に暮らして生計を共にしているが、籍を入れていない、いわゆる事実婚(内縁関係)という夫婦のあり方も増えてきました。

「家族の反対があって籍を入れることができなかった」、「先妻との子に気を遣って再婚できない」、「お互いに結婚にこだわっていない」など理由は様々でしょう。

しかし、20年、30年と苦楽を共にしてきた夫が亡くなってしまったとき、内縁の妻は夫の財産を果たして相続できるのでしょうか?

1. 内縁の妻は夫の財産を相続できるのか?

どんなに長年連れ添った相手でも、戸籍上配偶者でない内縁の妻は相続人になることはできません。

ですから、例えば、先妻との間に2人の子がいて、内縁の妻の間には子がいなかった場合には、相続人は先妻の子2人となり、内縁の妻は一切相続できません。

2. 内縁の妻に財産を相続させる手段は?

(1)遺贈する

内縁の妻に財産を譲るためには遺言にその旨を残すことがポピュラーな方法でしょう。「せめて一緒に住んでいた家くらいは内縁の妻に。」と思っていても遺言として残っていなければ、相続人のものになってしまうため、内縁の妻は家を追われてしまいます。

ただし、「相続財産を全て内縁の妻に遺贈する」とした場合、他の相続人の遺留分を侵害していることになるため、遺留分減殺請求を相続人からされることがあります。

そうなると、争いごとの種になりかねませんから、必ず遺留分に配慮した遺言にするとよいでしょう。

(2)特別縁故者として

配偶者も子も親も兄弟も、その代襲相続人もいないという相続人不存在の場合に、一定の期間待っても相続人が現れないというまれなケースで、内縁の妻の相続が認められることがあります。

その場合、裁判所に申立を行い特別縁故者として認められれば、財産を受け取ることができるのです。

3. 内縁の妻との子

厳密に言えば、子の父親が誰かなんてことはその子の母親にしか分からないものです。したがって、子の父親が誰なのかを子が生まれる度に申請しなくてはならないでしょう。しかし法律上は、戸籍上の夫が父親なのだという推定を受けます。ですから、妻Aと夫Bの婚姻期間内に生まれた嫡出子Cは、当然に夫Bとの子だと推定を受けるのです。

しかし、AとBが内縁関係で籍を入れていないときに生まれた非嫡出子(婚外子)Dは、当然に推定を受けることができないので、BがDを認知しなければBとDは親子にはなれないのです。

さらに、相続にあたっては、婚外子(非嫡出子)は嫡出子の半分しか相続することができません。つまり、内縁の妻との間の子は認知されなければ相続できないし、認知されても嫡出子の半分しか相続できません。

内縁の妻との子にもっと相続させたいと思うならば、遺言で遺贈するとよいでしょう。