相続債務とは

相続債務とは何か

遺産分割においてその対象となるのは積極財産(被相続人の動産や不動産などのプラスの財産)だけであり、被相続人が負担していた消極財産(被相続人の借金などのマイナスの財産)は、相続開始と同時に共同相続人の間で、それぞれの相続分に応じて当然に承継されるもので、遺産分割協議によってその負担を決めるものではありません。この相続における消極財産を相続債務と言います。相続債務については、その負担割合を遺言で指定することは許されません。なぜなら、もし弁済能力のない者が債務の相続人に指定されてしまうと、その債務についての債権者が不測の損害を被ることになりかねないからです。

したがって、相続債務自体に指定があった場合だけではなく、相続財産全体に対して一定の割合で相続分の指定があった場合も、その指定の効力は相続債務には及ばず、相続人は法定相続分に従って債務を負担することになります。

たとえば遺産分割協議において相続人の一人が被相続人の債務を全て相続するということになったとしても、債権者である金融機関などからの承諾がなければ、全ての債務を相続したということは主張できないのです。そして、各相続人は債権者からの、法定相続分に応じた負担分である債務の支払請求を拒むことはできないのです。