協議のために札幌の実家に行く必要はあるか

「高齢の父や母を遠く離れた地で一人にするのは心が痛む」と、田舎から呼ぶなんてこともあるでしょう。田舎から出てきた親の介護をしていたが、結果的には数年で亡くなってしまい、相続問題が発生した。という事案を紹介させて頂きます。

事案の内容

依頼者様は、生まれも育ちも札幌で、お父様が亡くなってからもずっと札幌で一人暮らしていた高齢のお母様を心配して東京に呼びよせました。

東京の病院にも通っていたのですが、1年足らずで亡くなってしまいました。相続が発生し、すぐに亡くなる半年前にお母様が書いた遺言が見つかりました。遺言の内容は「相続のことは世話してくれた依頼者に任せる。4人で分けるように」という包括的なものでした。

札幌にいる姉や弟は「札幌の実家で話そう」と言い、依頼者と妹は東京にいるので「母は東京で亡くなったのだから東京で話し合おう。」と言っていて、意見が分かれているのです。この場合、札幌まで行かなくてはならないのでしょうか?

また、遺言執行者を専門家に頼みたいが、どうしたらいいか?というご相談も承りました。

遺産分割協議 その1 -管轄をどこに置くか-

被相続人が残した遺言が包括的な内容ですので、特定の分割を指示していませんから、遺産分割協議を行わなければなりません。協議は札幌の実家で話し合いをしても構いませんし、東京で行っても構いません。しかし相続人全員で行わなければなりません。

ですから、相族人がお互いに話し合う場所について譲らず、協議が進まない場合は、家庭裁判所に調停を申立てるほかありません。この場合、管轄の裁判所は「相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所」と定められているので、①札幌にいる姉や弟を相手方にすると札幌の裁判所で行わなければならなくなります。

しかし、②東京に住む妹を相手方として申立てをすれば、東京の裁判所で調停が行われることになります。

管轄がどこになるかが、法的手続きをとる上で有利・不利となり、重要な問題です。こんな便法で自分に有利な管轄にすることがあることは意外と知られていません。頭に置いておくとよいでしょう。

遺産分割協議 その2 -遺言執行者は弁護士にお任せ-

遺言執行者は遺言で指定することができます。

また遺言執行者は家庭裁判所に選任してもらうこともできます。この場合、被相続人の最後の住所地の管轄家庭裁判所に請求することになります。従って、お母様の最後の住所地が東京であれば東京、札幌であれば札幌ということになります。

さらに、遺言執行者は弁護士も担うことが可能です。法的知識がない方が遺言の執行をするとうまくいかないことが多いものです。しかし、専門家である弁護士にお任せ頂ければ、あくまで中立な立場で、責任を持って遺言を執行致します。お困りの際はご相談の上、お任せ下さい。