福岡における事例 -納得できない遺言と遺留分減殺請求-

遺言は故人の最後に意思です。遺言によって得をする人もいれば、遺言によって期待していた相続財産が思いがけなく減ってしまう人もあります。

1. 福岡で見つかった遺言

相談者の母親は数年前まで福岡に夫(父)と住んでいらっしゃいました。しかし、夫が10年前に不倫をして「離婚して、不倫相手と結婚したい」と言うようになりました。

離婚したくなかった母は、東京に住む娘のもとに出て来て、離婚届には印を押しませんでした。

先日福岡に住んでいる親戚から、父が亡くなったという知らせを受けました。母と福岡に帰ったのですが、「遺産は全て内縁の妻に相続させる」という遺言が見つかりました。

「母も私も納得がいかないのですが、どうにかならないのでしょうか?」というご相談でした。

2. 遺留分減殺請求

遺言が有効なものであっても、法定相続人である配偶者と子には最低限保障された遺産の取り分があります。これを遺留分と言います。この遺留分は被相続人が遺言によって自由に処分できない範囲です。したがって、相談者と母は2人で遺産の1/2を相続できるのです。

しかし、これは被相続人の遺言が当然に無効になるものではありません。相続人は遺留分の限度で遺贈の効力を消滅させられるということなのです。つまり、遺留分減殺請求をすることで1/2の遺産を取り戻せるのです。

ただし、遺留分減殺請求の申立の裁判所の管轄は「相手方の住所地」となります。ですから、不倫相手が福岡の夫の住所に住んでいるのであれば福岡の家庭裁判所が申立先となります。

遺言で書かれていることが全てではありませんから、相続が起こったら、まず弁護士に相談されるといいでしょう。

この遺留分には注意が必要です。また、この権利の行使期間は自分の遺留分が侵されたことを知ったときから1年以内です。十分注意する必要があります。