使用貸借は相続されますか?

相続が起こると、それまで問題ではなかったことが一気に問題となってくることがあります。使用貸借なども貸している人が生きている間は、特段何の問題もないでしょう。しかし、相続になると、一体どうなるのでしょう。

1. 使用貸借と賃貸借

(1) 使用貸借とは?

法律では、「当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還することを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。

身近な所で言うと、友人に「読み終わったら返してね」と無償で本を貸したりすると、使用貸借になります。

使用貸借においては、(ⅰ)定めた時期に借用物を返還しなくてはなりません。(ⅱ)しかし、当事者間で時期を定めていなければ、「使用及び収益をするのに足りる時期を経過した」場合には返還請求ができます。

(2) 賃貸借とは?

賃貸借とは、法律で「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と規定されています。

つまり、DVDのレンタル店で「1本250円でDVDを1週間貸します。」というのが賃貸借です。

2. 貸主の死亡と使用貸借

Q:父親の不動産に「息子だから」と無償で同居して住んでいました(使用貸借)。父親(貸主)が亡くなり相続が発生し、現在姉達と遺産分割協議を行っています。この間、相続財産は共有なのだから出て行くように再三言われています。出て行かなくてはならないのでしょうか?

A:この場合は出ていく必要がありません。共同相続人の一人である借主は、被相続人と相続が開始した後も、遺産分割を終えて最終的に確定するまでの間、使用貸借の合意があったと解釈されます。そのため、誰が相続するか定まるまで無償で住むことが出来ます。
(最高裁平成8年12月17日判決)

3. 借主の死亡と使用貸借

民法では「使用貸借は、借主の死亡によってその効力を失う」と規定されています。ですから、親が使用貸借で借りているものは相続できませんから、返さなくてはならないのです。この点が相続される賃貸借と異なるわけです。

ただし、貸主を扶養していた場合など特段の事情があれば認められることもありますので、お困りの際は専門家である弁護士にご相談ください。