遺言書が無効になる危険性

自分の死後に、子どもたちなどの相続人が揉めることがないように、しっかり遺言書を作っておきたい。そう考える方が増えているようです。

民法では、遺言書で必ず記載しなければいけない事項や守らなければならない方式など、遺言書を書く上での約束事が定められています。そして、これらの約束事が守られない場合は、その遺言書が無効になってしまうことがあります。

あなたにとって大切な遺言が無効になってしまうことのないように、一番簡単な方式である自筆証書遺言について、その概要と注意点を解説します。

自筆証書遺言ってなに?

自筆証書遺言とは、 遺言者が、
(1) 遺言書の全文、日付、氏名を自書し
(2) これに押印すること
によって作成される遺言のことです。

自筆証書遺言が無効となってしまう典型的な例としては、以下のようなものがあげられます。

1. 「遺言書」がない遺言

自筆証書遺言は、証書として作成されていなければなりません。

したがって、口約束や、カセットテープなどに録音したものは無効です。

2. 2人以上の人が同じ遺言書でした遺言

遺言書は、一人一人が個別に作成することが必要です。

例えばご夫婦で同じ遺言をしたいという場合であっても、同じ内容の遺言書を別々に作成する必要があります。

3. 作成日付のない遺言

自筆証書遺言は、作成日付の記載が必要です。

日付が記載されていない場合やあいまいな記載の場合には、自筆証書遺言は無効になってしまいます。例えば「平成23年10月吉日」という記載がある遺言書は、作成日付がわかりませんので無効になります。

4. 遺言者の手書きではない遺言書

「自分は悪筆だから・・・」などと気兼ねして、自筆証書遺言をワープロで作ったり、誰かに代筆してもらったりすることを考えている方がいるかもしれません。

しかし、自筆証書遺言は、その名前の通り、遺言者が遺言書の全文、作成日付、氏名を「自筆」、つまり手書きする必要があります。

ワープロやパソコンで作った遺言書や誰かに代筆してもらった場合、自筆証書遺言は無効になってしまいます。

5. 署名・押印のない遺言書

自筆証書遺言には、署名と押印のどちらも必要です。

したがって、署名と押印のいずれかが欠けている場合であっても、その遺言は無効になってしまいます。もちろん署名は遺言者が自筆することが必要です。ただし、判子は実印でも認印でも大丈夫です。

6. 訂正の仕方が民法の要件を満たしていない遺言

民法では、自筆証書遺言の訂正方法も定められています。

具体的には、①変更の場所を指示し、変更したことを付記する(例えば、「第二行三字削除」のように記載します。)、②署名する(例えば、「第二行三字削除」のあとに氏名を書きます。)、③遺言の本文の変更した場所に印鑑を押す、という方法です。

これら①から③の要件を一つでも満たさない場合には、訂正が無効になってしまいます。また、場合によっては遺言書全体が無効となってしまう場合もあり得ます。

遺言書を書き損じた場合には、初めから書き直す方が無難かもしれません。

せっかく作った遺言書が無効にならないよう、不安な点がある場合には、弁護士に確認してもらうことが望ましいでしょう。平間法律事務所では遺言の相談も受け付けております。お困りの際はお気軽にお問い合わせ下さい。