一人の相続人にだけ財産を残すことはできますか?
「どうしても後継の長男にほとんど全ての財産を相続させたい」と思い、遺言書を作ることがあります。でも、他の相続人が不満に思い遺留分減殺請求をされてしまうと、遺留分を侵害した部分の財産を渡さなくてはならなくなります。
そこで、一人の相続人にほとんどの財産を相続させるための方法として、生前に被相続人がその他の相続人に事情を話して、納得してもらい、あらかじめ遺留分放棄の手続きを生前に裁判所でしてもらうやり方があります。子どもの一人に老後を見てもらう場合などは、この方法で財産を残すと良いでしょう。
それでは、具体的に遺留分放棄の方法についてご説明します。
遺留分放棄の申立について
遺留分放棄の申立は、遺留分を有する相続人本人が相続開始前に、被相続人の住所地の家庭裁判所に対して行います。
その際に必要な書類は以下の通りです。
(1) 申立書
(2) 被相続人の戸籍謄本
(3) 申立人の戸籍謄本
遺留分放棄の許可
遺留分放棄は本人同士の口約束や、本人たちの契約では法律上は何の効果もなく、家庭裁判所の許可が必要となります。
では、どのような場合に認められるのでしょうか?
家庭裁判所が遺留分放棄を許可する基準
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放棄が本人の自由意思に基づくものであること
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放棄の理由に合理性と必要性があること
例えば、建物の細分化の防止などが挙げられます。
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代償性があること
例えば、特別受益があったり、放棄と引換に現金の引渡しがあったり、一人の子に介護を委ねる場合などが挙げられます。
以上のような場合に家庭裁判所は遺留分放棄を許可します。
相続放棄と遺留分放棄
相続放棄と遺留分放棄の違いは何でしょうか?
相続放棄は被相続人が亡くなってからしか手続が出来ないのに対し、遺留分放棄は生前に裁判所に手続を行うことができます。これは、家制度により長男が全ての財産を相続するという日本的な慣習があったからと言えます。
以前はよく長男が他の相続人に対して生前に相続を放棄するように脅すということがありました。年長者の長男が他の相続人が社会的にも肉体的にも未熟な時に相続放棄をさせてしまうことを防ぐために、相続放棄は被相続人が亡くなった後でしか認められなくなったのです。
また、遺留分放棄は相続放棄とは異なり、相続人でなくなるわけではありません。なので、遺言書により相続財産の指定がなかった場合は、遺留分放棄を行った相続人も普通に法定相続なされることとなります。
遺留分放棄の方法について何かご不明な点がございましたら、お気軽に平間法律事務所までお問い合わせ下さい。